「あぢさゐ」の季節になりました☆


にわか雨や湿度が高い日が続いています。
もうそろそろ紫陽花が見頃ですね。

アジサイの花は古くから日本人に親しまれてきました。平安時代といえば、和歌が思いつくのではないでしょうか。気持ちを歌に込めて贈る贈答歌や歌合わせなどがあり、貴族の男女の間では恋の駆け引きやプロポーズにも和歌が詠まれていました。梅雨の代表花であるアジサイは、最古の記録では奈良時代後期の万葉集に2首読まれており、平安後期からも和歌に取り入れられています。アジサイには奈良時代や平安時代は「味狭藍」「安治佐為」「阿豆佐為」という漢字が当てられて使われています。

源俊頼(みなもとの としより)の歌には、「あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな」、夜にアジサイの繁みから洩れた月の光が、池の水面にアジサイの四ひらの花のように映っている。その影をさながら(そっくりそのまま)折り取ることができたらなぁ、という幻想を月とアジサイのコラボで詠っています。
また、藤原定家(ふじわらの さだいえ)の歌では、「あぢさゐの 下葉にすだく 蛍をば 四ひらの数の 添ふかとぞ見る」、アジサイの花が群れで咲いていたが夕暮れになって花は見えなくなった。変わりにアジサイの下葉には蛍が集まり、やがて光り出した。まるでアジサイの四ひらの花の数が増えたかのように、まぼろしの花が咲いている、と、蛍とアジサイの光と影を使って、こちらも夢まぼろしの世界を詠っています。

アジサイの原産国は日本です。ホンアジサイ、セイヨウアジサイ共に原種は日本に自生しているガクアジサイです。ガクアジサイの花は、1つの花に雄しべと雌しべを持つ両性花です。他には桜や朝顔、スミレ、菊、タンポポなども両性花です。ガクアジサイは中心部に雄しべと雌しべがあり、その周りを小花が6~9個で囲んでおり「額咲き」といいます。しかしこの小花は、本当は花ではありません。装飾花と呼ばれる「がく」です。がくとは、花びらの外側にある花葉のことで主に葉と同じ緑色をしていますが、アジサイはまるで花のような見た目をしています。
あれ?じゃあ花びらはどこにあるの?と思いますよね。花びらはがくの真ん中にある、小さな玉です。小さな花びらが5枚ほどついた花が咲きます。広くアジサイとしてイメージされているのは、このガクアジサイが変化したホンアジサイです。ホンアジサイは、小花が密集して球状になっており「手まり咲き」と呼ばれます。花壇や公園でよく見かけるアジサイです。ヨーロッパではガクアジサイを元に品種改良が行われ、ヨーロッパで作られたアジサイをセイヨウアジサイといい、逆輸入されて日本でさらに改良がされています。

さて、何時ごろからアジサイ=紫陽花という漢字になったのでしょう。日本でこの漢字が当てられ始めたのは平安時代の歌人で学者であった源順(みなもとの したごう)という人物の勘違いからと言われています。
源順は、中国の白楽天の詩の『白居易があるお寺で紫色の良い香がする花を見つけたが、だれもその名を知らなかったので、「紫陽花」という名をつけた』という文を読み、「紫陽花」の花の特徴から、ガクアジサイを同じ花だと考えてこの漢字を当てたそうです。しかしながら、アジサイは日本原産の花ですから、白楽天が詩に詠んだ花は別物です。本当はライラックの花のことだと言われています。

アジサイの花言葉は日本では、「移り気な心」「強い愛情」「一家団欒」「家族の結びつき」などがあります。フランスでは、「元気な女性」。フランスの土壌はアルカリ性のために、ピンクの花色のアジサイが主流だそうですので、この花言葉になったのかもしれません。弱酸性の土壌の多い日本では青色や紫色のアジサイが昔から親しまれてきました。土壌の性質の変化で青色から赤色へと変化をするところが、人の心の変化と重なり、移り気という花言葉になったのかもしれません。

1823年に長崎の出島にオランダ商館の医師として来日したドイツ人のシーボルトは、帰国後、日本を紹介する『日本植物誌』の中で空色のアジサイに “Hydrangea otaksa(ハイドランジア オタクサ)” と命名して紹介しています。オタクサとはシーボルトが妻のお滝さんを呼ぶとき、おタキさんという発音が難しく、おタクさんとなっていたそうで、その音をそのまま使ったそうです。アジサイ属の新種に自分の妻の名前である「お滝さん」の名を付けました。残念ながらすでに別の学者によって命名されていた品種であったため、正式名ではありませんが、彼の妻に対する深い愛情によって、アジサイの花はヨーロッパ中に広まり、品種改良されたセイヨウアジサイは世界中で観賞用として栽培されています。

「雨の日は外に出かけてもつまらないし・・・」、と思っている方!今年は1週間から10日早くから紫陽花が開花しています。濃い青色であったり、紫やピンク、緑や真っ白など様々な色と品種にあふれた紫陽花の見頃は間もなくです!ぜひ関東各地の紫陽花の名所にお出かけしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、雨の日は大きめの透明なビニール傘でのお出かけが、傘の色で花に影がかからず後方の花も見えるので、紫陽花の観賞や記念写真の撮影時にもオススメですよ☆